当院には連日胃の不調を抱える患者さまが沢山来院されます。
症状としては、胃の不快感や胃痛、胸焼け、吐き気、ゲップ、食欲低下など様々です。
今まで内服薬で様子をみていたけれど、なかなか良くならず辛い症状が続いている患者さまもいらっしゃいます。
そこで今回は、毎日休まず頑張って働いている「胃」についてお話したいと思います。
食べ物は口から摂取し肛門から便として排泄されるまで一本の消化管という管でつながっています。
口から食道を通り胃と小腸で消化・分解されます。
その後、主に小腸からエネルギーとして吸収された後、大腸で水分量が調節され肛門から便として排泄されます。
この消化吸収を行う食べ物の通り道「消化管」は、成人では9メートルにもなるそうです。
その中でも、「胃」は食べ物を胃液と混ぜて消化し、十二指腸に送る働きをしています。胃袋と言われる通り、筋肉でできた袋状の臓器です。
【胃の主なお仕事】
①食べ物の貯留と十二指腸への排出
空腹時の胃の容量は50mlですが、食べ物が入ると風船のように1.5〜2ℓまで膨らみます。
食べ物が胃に入ると、食道に逆流しないよう胃の入り口は閉じます。胃の筋肉の蠕動運動で胃液と混ざりながら消化され、おかゆ状になります。
内容量が一定量を超えると、一気に流れないよう3〜6時間かけてゆっくりと十二指腸に食べ物を運びます。
熱い食べ物や冷たい食べ物は、そのまま腸へいかないよう胃で温度調節もしています。
②胃液の分泌
・胃の中を強酸性に保ち、食べ物の中にいる細菌や微生物を殺菌する「胃酸」を分泌します。
胃酸は消化にとって大切な存在ですが、胃酸の分泌が過剰になると胃粘膜が荒れてしまいます。
・タンパク質を分解する「ペプシン」を分泌します。
・胃酸から胃粘膜を保護する為に「胃粘液」を分泌します。
③消化管ホルモンの分泌
ホルモンとは特定の器官の働きを調節する為の情報伝達を担う物質のことを言います。
胃は消化管ホルモンを分泌することで、胃酸分泌量の調整、腸の働きをコントロールしています。
また、食欲増進ホルモンも作っています。
【胃のトラブルの原因】
胃粘膜は再生能力が高いので、強力な胃酸により荒れてしまったとしても自然に回復することが可能です。
しかし、胃酸などの胃粘膜にダメージを与える攻撃因子と胃粘膜の防御機能のバランスが大きく崩れてしまうことにより、様々なトラブルを引き起こします。
①偏った食生活(食塩の過剰摂取)
②過度なストレスや過労による自律神経の乱れ
③喫煙
④飲酒
⑤ヘリコバクターピロリ菌感染
特に近年、ピロリ菌の持続感染により胃・十二指腸潰瘍、胃癌の発生リスクが高まることがわかっています。ピロリ菌の除菌により、その発生や再発を予防する事が可能です。
【どんな症状があるの?】
胃炎から胃癌まで、胃の疾患では似たような症状がみられます。
・心窩部痛
・胃もたれ、膨満感
・胸焼け
・悪心、嘔吐
・吐血、黒色便
・貧血症状
・体重減少
もし、このような症状がある際は、放っておかずに診察を受けましょう!
【どんな疾患があるの?】
①胃癌
②胃潰瘍
③慢性胃炎
④機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)
⑤逆流性食道炎
①胃癌
近年、胃癌の死亡率は早期発見・治療が進み減少傾向にはありますが、最新情報では3番目に死亡数の多い癌となっています。
胃癌の多くはピロリ菌感染により引き起こされます。
胃カメラでピロリ菌がいそうな所見があれば胃カメラ終了後にピロリ菌の検査を積極的にご案内しております。
呼気テストという20分程の簡単な検査です。
その場ですぐに結果がでるので、ピロリ菌陽性の場合は除菌を始めていただきます。
胃癌は静かに進行し、初期は無症状であることが多いため、胃カメラによって初期の胃癌病変の存在を確認することが大切です。
また、胃カメラは胃癌病変の大きさや深さを推定し、治療方法を決めるのに重要な検査となります。
早期胃癌は内視鏡的治療、外科的治療により治癒が望めます。
②胃・十二指腸潰瘍
胃酸が多くですぎてしまい、胃粘膜がただれてしまう病気です。
悪化すると、胃壁が深くえぐられてしまいます。
原因として、非ステロイド抗炎症薬の内服、ピロリ菌感染、過度なストレスなどがあげられます。
主な症状は胃痛、腹部膨満感、悪心ですが、無症状のことも多いです。
進行すると、消化管出血や胃に穴が開く「穿孔」をひきおこします。
出血を合併している場合は、胃カメラによる止血術をおこないます。
また、早期胃癌との鑑別が必要となる場合は胃カメラ時に生検をして病理検査を行います。
基本的に胃酸を抑える薬による投薬治療で改善が望めます。
③慢性胃炎
胃カメラで確認される萎縮性胃炎や肥厚性胃炎などを総称して慢性胃炎と呼びます。
ピロリ菌感染によるものと自己免疫機序によるものに分けられます。
萎縮性胃炎はピロリ菌感染胃炎の大半で認められ、胃カメラで胃粘膜が薄くなっていることを確認できます。
進行すると胃癌の発生母地となるため、ピロリ菌検査をした上で除菌治療を行います。
⑤機能性ディスペプシア(機能性消化器疾患)
胃カメラや血液検査で異常を認めないにも関わらず、運動機能異常による慢性的な胃もたれや内臓知覚過敏による心窩部痛を中心とする腹部症状がみられます。
ストレスとの関係が高く、規則正しい生活を心がけるとともに、運動機能改善薬や胃酸を抑える薬による投薬治療、心療内科的治療を行います。
⑤胃食道逆流症(GERD)
酸性の胃内容物の食道に逆流することによって胸焼けやつかえ感などの煩わしい症状がみられます。びらんや潰瘍などの粘膜障害の有無により2つに分類されます。
・粘膜障害を認めるもの・・・「逆流性食道炎」
胃内容物の逆流防止を担う下部食道括約筋が緩む事や胃酸分泌の亢進が原因となります。また、高齢女性の脊椎後弯も関係しており、日本では高齢女性に多い特徴があります。
・粘膜障害を認めないもの・・・「非びらん性GERD」
若い女性に多くみられ、強い自覚症状を有します。
酸に対して食道粘膜が過敏になっているのではないかと考えられています。
胃酸を抑える薬による投薬治療を行います。
当院では、病変の有無を正確に診断し的確な治療ができるよう、積極的に胃カメラをご案内しております。
健康的な生活を送ることができるよう、日々の規則正しい生活を心がけると共に、定期的に検査をすることが大切です。
当院の鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラは、実際に受けられた患者さまから「とても楽に検査ができました」というお声を日々いただいております。
胃カメラは24時間ネットからの予約や、LINEお友達登録をしていただくとより簡単に予約や事前問診を行うことができ、当日スムーズなご案内が可能となります。
もちろん、お電話でのご予約も可能ですので、ご不明点があればお気軽にご連絡くださいませ。
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
こまめな水分摂取を心がけ、しっかりと休息をとり、夏の暑さを乗り切りましょう!