検診などで食道裂孔ヘルニアと指摘されたご経験はありますか?
ヘルニアとは、臓器が体内の本来のあるべき位置から脱出してしまった状態をいいます。
ヘルニアはよく耳にする病名だと思いますが、有名はものとして、鼠径ヘルニア、椎間板ヘルニア、臍ヘルニアがあります。
では食道裂孔ヘルニアとは?
飲みこんだ食べた物はまず食道を通り、胸とお腹の境にある横隔膜を越えて胃の中に入っていきます。食道裂孔とは食道を通すため横隔膜に開いている穴で、この周辺には逆流防止の弁の役割を果たす筋肉「下部食道括約筋」があります。
しかし、この食道裂孔部がゆるむと、本来、横隔膜より下の胸腔内に存在するべき胃の一部が横隔膜より上の胸腔内に飛び出します。これが食道裂孔ヘルニアです。
胃の飛び出し方により滑脱型、傍食道型、混合型に分類されます。その多くは滑脱型です。
- ①滑脱型は食道裂孔ヘルニアの約90%が滑脱型で、最も頻度が多いタイプです。
逆流性食道炎の原因ともなります。
- ②傍食道型は数%の頻度と少なく、噴門の偏位は見られないものの、ヘルニア門が狭いために絞扼・嵌頓が起きる場合があります。
- ③混合型は稀に起こるもので、滑脱型と傍食道型の両方が出現した状態です。
生まれつき、食道裂孔ヘルニアが存在するケースもありますが、多くは肥満や加齢による姿勢の変化(腰がまがる)、気管支喘息、喫煙、腹水などによってお腹に圧力がかかることで起きます。
成人以降に発症する食道裂孔ヘルニアはヘルニアが存在するだけで症状はほぼありません。
しかしヘルニアにより胃液を中心とした胃の内容物が容易に食道に逆流する事で、さまざまな症状がおこります。
代表的な症状は胃酸の刺激による胸やけ、胸痛、胸のつかえ感であり、これを胃食道逆流症と呼びます。
胸の痛みはときにとても強く、狭心症などの心臓病に間違われることもあります。
診断は主に胃内視鏡検査されることが多いですが、バリウム(胃食道造影検査)やCT検査で診断されることもあります。
無症状の場合は治療の必要ありませんが、逆流症状があれば胃薬を処方いたします。
ごく稀ですが、通過障害や壊死などがあれば外科的手術(腹腔鏡手術が一般的)が必要となることもあります。
当クリニックでは胃内視鏡検査をさせていただいておりますが、食道裂孔ヘルニアに遭遇する機会は多いです。
また当クリニックでは痛みや苦痛を最小限に抑えた胃内視鏡検査を行っておりますので、是非一度、お気軽にご相談ください。