最近、「固形物だけでなく、液体も飲みにくい」、「胸の痛み」、「背中の痛み」などの症状はありませんか?
もしかしたら、食道の筋肉に異常がある「食道アカラシア」かもしれません。
アカラシアはギリシア語で『弛緩することがない』という意味で原因不明の機能異常が考えられている病気です。
どの年代にも発症する可能性がありますが、20歳代から40歳代が多いとされています。
頻度は人口10万人あたりに1人と言われていて、珍しい病気です。
また、食道アカラシアは食道がんの危険因子と考えられていて、5%が食道がんを合併するといわれています。
主な症状は食道から胃の中に食べ物が落ちていかないため、食べ物が入らない、寝ている間に嘔吐してしまう、胸や背中が痛む、体重減少、などがあります。
診断は通常、上部内視鏡検査(胃カメラ)、食道透視検査、コンピューター断層写真(CT検査)などにより食道アカラシアと診断されます。
(診断を確定する精密検査として、食道内圧測定検査があります。)
食道アカラシアの患者様が上部内視鏡検査を行った場合、喉から挿入した際にたくさんの液体が溜まっていることがほとんどです。
胃と食道のつなぎ目の部分が強く締まっているため、液体はもちろん固形物はなかなか胃の中に落ちていきません。内視鏡が通るのも大変なことがあります。
治療方法は大きく分けて内服治療、内視鏡治療、手術があります。
① 薬物療法
下部食道括約筋の圧力を下げる薬を用います。
② 内視鏡的バルーン療法
下部食道括約筋に風船をいれ筋肉の一部を裂くことで食道の流れをよくします。
③ 「POEM(ポエム:Per-Oral Endoscopic Myotomy)」経口内視鏡的筋層切開術
上部内視鏡検査で食道に穴をあけて、下部食道括約筋を切開して広げる治療です。
④ 腹腔鏡下手術
POEMが普及するまで主流だった治療法で、ポートと呼ばれる穴を腹部に数か所開け、そこから内視鏡と鉗子と呼ばれる道具を使用して手術を行います。
これらの治療法によって、食道が大きく広がりすぎていないか、食道と胃のつなぎ目が狭くなりすぎていないか、圧力がかかりすぎていないか、食道が正常に機能しているかを検査し、検査結果を総合的に判断して食道アカラシアかどうか判断します。
食道アカラシアをはじめとする、食道機能障害は経過の長い病気であり、食道の状態によって治療法が異なります。
当院では鎮静剤を使用し、苦痛の少ない上部内視鏡検査を行う事ができます。
嘔吐を繰り返す、特に寝ている時に嘔吐してしまう、原因のはっきりしない喉の違和感などの自覚症状がございましたら、お気軽にご相談ください。