マロリー・ワイス症候群という病名は耳慣れないという方が多いかもしれません。
今回は胃の病気、マロリー・ワイス症候群についてお話したいと思います。
マロリー・ワイス症候群とは、繰り返す激しい嘔吐の為に食道に圧が加わり、食道と胃の中間付近の粘膜が破れて出血する病気です。
アルコール過飲後の激しい嘔吐のあとに起こることが多く、過食後や薬物服用、咳の疾患 による嘔吐、船酔い、食中毒、妊娠の際のつわりなどでも起きることがあります。
症状としては、激しい悪心、繰り返す 嘔吐後の吐血、下血(黒色で異常な色の便)、心窩部痛(みぞおち付近の痛み)、立ちくらみ等があります。
また出血の量 が多いときはショック状態に陥ることもあります。
男性に多くみられる病気で、好発年齢は平均45歳から50歳とされていますが、こどもでも起こったという報告もあります。
主に行われる検査は、血液検査、胃内視鏡検査です。
胃内視鏡検査を行った時には、すでに自然止血している場合もあり、粘膜損傷部位に血液の塊がみられることもあります。
血液検査は吐血や下血を起こしているため、貧血の状態が認められます。
胃内視鏡検査ではどこから出血しているのか、潰瘍・裂創の深さ、大きさ、出血の状態を観察します。
治療方法はほとんどの場合、 止血薬、酸分泌抑制薬、粘膜保護薬等の保存的治療のみで自然治癒が期待できます。
ただし、出血が多い場合には、血圧がしっかり保てているかどうかを確認し、血圧が低下している場合には、点滴や輸血なども考慮します。
また胃内視鏡検査時に、強い出血が確認された場合は出血している場所に対してクリップでつまむ方法や、血管を電気で焼き焦がすことで止血する方法があります。
出血部の傷が深い場合は、入院の上で数日間食事を止めて、点滴を行い食道粘膜が治るのを待ちます。
出血は時に命にかかわる重大な症状です。
鼻血を飲み込んでしまった、口の中を切ってしまった等、明らかに出血の原因がわかっていて、すでに血が止まっている場合を除いて、吐いたものに
血液が混じる場合は、なるべく早めに内視鏡検査を受けることをお勧めします。
当院では鎮静剤を使用し、なるべく苦痛の少ない胃内視鏡検査を行っています。
基本的には予約制での検査になりますが、医師が診察をして、緊急性があると判断した場合は即日胃内視鏡検査を行うことも可能です。
嘔吐後に血を吐いてしまった際には注意が必要ですので、お気軽に当院までご相談ください。