待ちに待った春到来です。だんだんと暖かくなってきた3月。新生活を迎えるにあたり健康診断を受ける方も多い時期かと思います。
今回は健康診断で目にするALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPに関するお話をさせていただきます。
この数値は肝臓の機能を調べるための代表的な検査項目です。
肝臓は横隔膜の下、胃の隣に位置する体の中で最も大きな臓器です。
肝臓の働きは次のように大きく3つに分けることができます。
①食べ物の栄養素を体が吸収できるよう変化させたり、貯蔵、供給したりする働き
②体内に入ったアルコールや薬、有害物質などを分解して無毒化する働き
③腸内での消化吸収に必要な胆汁という液体の生成と分泌
このように体にとって重要な働きをする肝臓ですが「沈黙の臓器」と呼ばれています。それは一体なぜなのでしょうか。以下では肝臓が「沈黙の臓器」と言われる理由を説明していきたいと思います。
肝臓には痛みを感じる神経がないため全体の20%〜30%が病気により壊れていても働き続けることができると言われています。
これこそが肝臓が「沈黙の臓器」と言われる所以です。
「沈黙の臓器」の怖いところは肝臓の病気で自覚症状が出た時には既に症状がかなり進行していることがあるところです。
それではそんな肝臓で起こる病気にはどういったものがあるのか主要なものを紹介したいと思います。
一つ目は脂肪肝です。脂肪肝は肝臓に脂肪が多くたまった状態のことを指します。この状態を放置することにより炎症が起こり肝炎、肝硬変、肝がんへと進行する可能性があります。
また、お酒の飲み過ぎによるものをアルコール性肝疾患といい、お酒をあまり飲まない人でも起こるものを非アルコール性肝疾患といいます。
二つ目は肝炎です。肝炎とは、肝臓が炎症を起こし肝細胞が破壊された状態を言います。肝炎には急性肝炎と慢性肝炎の二つがあり、急性肝炎とはウイルス性、自己免疫性、薬物性などにより短期的に炎症が起こることをいいます。慢性肝炎とは約6カ月以上、肝臓の炎症がつづいている状態のことをいいます。主に急性肝炎が治りきらず慢性化することが多いですが、自覚症状がとても軽いため健康診断の血液検査で偶然見つかることが多いです。しかし、そのまま放っておくと肝硬変や肝臓がんになることもあるため、注意が必要です。
三つ目は肝硬変です。肝硬変は、慢性肝炎などによって肝細胞の破壊と再生を繰り返すうちに肝臓の表面にかさぶたのような物質ができます。このような状態を線維化といい、線維化が進行すると肝細胞の周囲が線維化で囲まれ「肝硬変」になります。肝硬変になると肝臓のはたらきが低下し、もとにもどらなくなります。また、肝臓がんに発展することもあります。
最後に紹介するのが肝臓がんです。肝臓がんは他の臓器のがんと異なり慢性肝疾患からの進展が多いとされています。
肝臓がんはいったん根治できたとしても、年間20%が再発するといわれています。
一般的に肝臓がんは、長期にわたり肝臓が炎症を起こし肝細胞が破壊と再生を繰り返すことで発がんするといわれています。そのため、肝炎や肝硬変などの早期発見や治療、進行をおさえることが重要であるとされています。
このように肝臓は症状が出にくく気づいた時には癌化しているかもしれない臓器です。肝臓の細胞が破壊されると上昇するのがAST、ALTやγ-GTPでありこれらの数値が沈黙の臓器から発せられるシグナルであるといえます。
ぜひ健康診断を受けた際にはこれらの数値を確認し沈黙の臓器の声に耳を傾けてみてください。