今回は、「胃・十二指腸潰瘍」のお話です。
胃や十二指腸の壁は、強い塩酸を含む胃液でも溶かされないよう、粘膜血流や粘液などのさまざまな防御因子で守られています。
潰瘍は、胃を消化しようとする攻撃因子と、胃を守ろうとする防御因子とのバランスが崩れて粘膜が傷つくことでできると考えられています。主な攻撃因子は、ピロリ菌感染の影響と非ステロイド性抗炎症薬などが挙げられます。
ピロリ菌は、近年の胃潰瘍患者さんの80%~90%、十二指腸潰瘍の患者さんの90%以上が感染しており、主要な原因と考えられています。
胃の粘膜は、ピロリ菌に感染すると炎症をおこします。数週間から1か月で胃粘膜全体に広がり、慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)となります。この状態が続くと、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などを引き起こす原因となることがあります。
感染しても潰瘍になる人は2~3%ですが、服用でピロリ菌除菌することによって発症のリスクや再発を抑えることができます。
〇防御因子
粘膜を保護する防御因子には、胃酸や消化酵素のペプシンから粘膜細胞を守る粘液(粘膜から分泌される液)、粘液を分泌する細胞を正常に保つ粘膜血流、攻撃因子に対する粘膜に抵抗性などがあります。
×攻撃因子
粘膜の攻撃因子の最大のものはピロリ菌。非ステロイド性消炎性鎮痛薬、胃酸や消化酵素のペプシンも粘膜の攻撃因子となる。アルコール、たばこの煙、ストレスなども若干影響するとみられています。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID) は、アスピリンが最も有名ですが、風邪薬や頭痛・腰痛などの鎮痛薬、低用量で血栓予防薬などにも使用されます。
副作用として、胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりするため、場合によっては、胃炎や胃潰瘍をおこす原因となります。
この非ステロイド性抗炎症薬による潰瘍の特徴は症状が出にくいことです。気づかないうちに重症化することもあります。
このほかの要因として、ストレスや過度な飲酒などが挙げられます。
ピロリ菌と無関係に潰瘍を起こす可能性は低いのですが、ピロリ菌感染とこれらの要因が重なると、潰瘍を起こす危険性は高まると考えられています。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍が疑われる場合には、当院では苦痛が軽く済む胃内視鏡検査を行うことができます。その結果ピロリ菌が疑われれば除菌治療を行います。ピロリ菌の除菌治療を行うことで、潰瘍の再発を大幅に減らすことができます。
また、潰瘍の原因が非ステロイド性抗炎症薬の場合には、薬の変更や胃薬を併用する事で再発を防ぎます。
少しでも胃に不調を感じる場合は、早めにご相談下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました。