ようやく厳しかった残暑も少し和らぎ、涼しさを感じる日も増えてきましたね。
気温の変化も激しい上に、インフルエンザも流行しています。体調管理に気をつけてお過ごしくださいね。
さて、今回は『膵のう胞』についてお話しさせて頂きます。
検診やドックで、腹部エコー検査を行うと“膵のう胞”を指摘され精密検査の判定となることがあります。膵臓、と聞くと怖い病気を想像されるかもしれません。症状が出にくい臓器である上に、病気の発見も難しい臓器なので、予後の不良ながんの一つとして膵臓がんが知られているからかもしれません。
膵のう胞とは、膵臓の中にできる水分や粘液などの成分を内部に含んだ袋状の構造物を指しています。膵のう胞と言っても様々な種類があり、治療の必要のないものや手術が必要なものも含まれます。大きく分けて、非腫瘍性のう胞、腫瘍性のう胞に分けられます。
①非腫瘍性のう胞
主には膵炎や手術、外傷により生じる仮性のう胞があり、悪性化するリスクのない良性疾患ですが、大きいものだと腹痛を起こしたり、感染を引き起こしたりすることがあります。
②腫瘍性のう胞
良性も悪性のタイプもあり、主には膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性のう胞腫瘍(MCN)、漿液性のう胞腫瘍(SCN)などが含まれます。中でも最も頻度が高く、無症状で検診で指摘されることも多いのが、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)です。
IPMNは、膵臓で産生される膵液が通る膵管の上皮にできる腫瘍で、粘液を分泌することが特徴です。この粘液が膵管をうっ滞させ、ぶどうの房状ののう胞を形成したり、主膵管が太くなったりします。腫瘍が主膵管にできたものを主膵管型IPMN、末梢の細い膵管にできたものを分枝型IPMNと分類しますが、主膵管型には悪性のものが多く、分枝型には良性が多いです。
悪性のもの、もしくは悪性化するリスクが高いと判断されたものに関しては手術を行い、良性と考えられるものは定期的な経過観察を行います。
通常型の膵癌に比べ進行が遅いため厳重な経過観察による早期発見、根治治療も期待できると言われます。
一般に無症状ですが、増大に伴い腹痛が出現したり、膵炎を引き起こすこともあります。
腹部エコー検査のみではのう胞のタイプを判断することが難しいため、造影CT検査やMRI/MRCPなどでの精密検査を行います。更なる精査として超音波内視鏡検査(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などの検査を行うこともあります。
検診等で膵のう胞を指摘されたら、まずはどんなタイプののう胞なのかを診断するために適切な画像検査を行い治療方針を決定することが大切です。また手術が必要ないと判断された場合も定期的な検査を受けていただくことが重要です。
当院でも腹部エコー検査をお受けいただくとこが可能です。必要に応じて適切な検査や治療方針をご案内いたします。まずはお気軽にご相談ください。