緊急事態宣言が解除され、少しずつ従来の生活を取り戻しつつある中、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
コロナウイルスの影響でなかなか医療機関に受診できず、お困りの方も多かったかと思います。
当院では引き続き、皆様に安心してご来院いただけるよう、新型コロナウイルスへの感染対策に努めてまいります。
さて、本日は当院でも患者様からの相談数の多い「胆石症」についてお話ししたいと思います。
先日も「会社の健康診断で胆石があると指摘された」と相談に来られた方がいらっしゃいました。
日本の胆石保有率は食生活の欧米化、脂肪摂取量の増加、高齢化とともに年々増加しており、現在では成人の10人に1人は胆石を持っているとされています。また、70歳以上の高齢では発症率が増加するともいわれています。やや女性に多い症状というのも特徴です。
内臓の中で一番大きな臓器は肝臓であり、食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化・吸収を助ける消化液を作る働きがあります。この消化液が「胆汁」です。
肝臓では、1日に約500~800ml程度の胆汁が作られるといわれおり、この胆汁が胆管を通り、十二指腸へと排出され、脂肪や炭水化物の消化を助けます。
胆汁の通り道である胆道(胆のうや胆管)に石ができ、時に痛みなど様々な症状を引き起こす病気の総称のことを「胆石症」と呼びます。
胆石は胆汁に含まれる成分が凝縮され結晶化し、石のように固まったものをいいます。いくつか種類があり、できる原因も様々です。
脂質を摂り過ぎたために、胆汁の中でコレステロールが固まり、少しずつ大きくなる結石のことを「コレステロール結石」、胆汁の流れが悪かったり胆管の細菌感染などが原因でできる色素系結石を「ビリルビンカルシウム石」、また「黒色石」というものもありますがこれに関してはなぜ結石ができるのか詳細は明らかにされていません。
これらの結石がどこにできるのかによって「胆のう結石」、「総胆管結石」、「肝内胆管結石」などの名称に分けられます。
胆石症と診断されても、中には症状のない方もいらっしゃいます。このような状態をサイレントストーン(無症候性胆石)といいます。
症状がある場合、一般的にあげられるのは右側の肋骨の下辺りからみぞおちにかけて差し込むような激しい痛みが突然出現するという症状です。右肩や背中の痛みを伴う場合もあります。このような症状は、脂肪分が多い食事をした数時間後に起こりやすいという特徴があります。
他にも皮膚が黄色くなる黄疸や嘔吐症状などがみられたり、胆石が原因で胆のうや胆管に炎症を起こし、高熱が出ることなどもあります。
上記のような症状で医療機関を受診された場合、画像検査により胆石症かどうかを探ることができます。その中で最も標準的な方法が、当院でも行っている腹部超音波検査です。
特に胆のう結石の診断時には、腹部超音波検査が有効とされています。
超音波検査は、プローブと呼ばれる小さな装置をお腹にあてるだけの検査なため、患者様の体への負担が非常に少ない検査です。
超音波が出るプローブをお腹にあて、胆石の大きさ、個数を確認した後、胆のうが腫れていないか、萎縮していないか、胆のう全体が写っているかなどを確認します。
また、胆のうの大きさが通常よりも大きかったり小さかったりする場合は、その原因が炎症なのか、または癌が隠れていないかを調べるためCT検査をお勧めする場合もあります。(当院ではCT検査は行っていないため、紹介先に受診していただきます)
胆石症の治療法として、手術やその症状をコントロールするために薬物療法を用いますが、胆石症は生活習慣と密接に関連しているため、食生活の改善も予防法としては有効とされています。
今回は、食事の注意点についてもいくつか紹介したいと思います。
①消化のよい食事を一定量・規則正しく。
消化の悪い食事や一度に大量に食べると、胆のうや胆管に余分な負担がかかります。また、食事と食事の間があいても胆石はできやすくなってしまいますので、1日3回規則正しい食生活をこころがけることが大切です。
②コレステロールや脂肪分が多く含まれるものは控える。
コレステロールの過剰摂取は、コレステロール結石を形成しやすくなるといわれています。コレステロールや脂肪分の多い食事(卵、バター、脂身の多い肉など)は控えるようにしましょう。
③食物繊維を充分に摂る。
食物繊維、特に水溶性のもの(豆類、ブロッコリー、にんじん、りんごなど)は、コレステロールの吸収を抑えたり、コレステロールを含んだ胆汁を排泄させる働きがあるため、積極的に摂取しましょう。
④糖分の摂り過ぎには注意する。
甘いものは、血中の中性脂肪を上昇させてしまいます。肥満の場合は制限が必要です。
⑤水分を十分に摂取する。
水分不足は血中のコレステロール濃度や脂質が高くなり胆石を形成しやすくなります。
⑥肥満を予防する。
肥満は胆石の危険因子です。食べ過ぎ、飲み過ぎに気を付けるだけでなく、適度な運動を行いましょう。規則正しく、栄養バランスが良い食事を心掛けることも大切です。
⑦飲酒・刺激物を控える。
アルコールは胆汁の濃度を濃くしてしまう原因になります。また、炭酸飲料や酸味が強い食品など胃を刺激するものは胆石発作の原因となるため、すでに胆石がある場合には控えた方が良いでしょう。
上記はあくまでも予防法となりますので、痛みなどの症状がある場合は状態に合わせて検査や治療法をご提案させていただきます。一度診察にてご相談ください。
胆石症は検診等で偶然発見されても、無症状の方が多く、自分は治療が必要なのか必要ないのか、悩まれることが多いかと思います。
しかし、症状がないからといって安心してはいけません。
一度、腹痛等症状を呈するようになると急性胆のう炎や膵炎などの合併症の出現率も高くなり、場合によっては胆のう癌を引き起こす場合もあります。
痛みの症状がある方は、早めに医療機関を受診し相談するようにしましょう。
また、今はまだ胆石がない方や無症状の方でも、年に1回の定期的な検査を受けることが大切です。
どんな些細なことでもかまいませんので、何か気になる症状等がございましたら、ぜひ当院で一度ご相談ください。