市販の下痢止めを服用すると、病原体や毒素が排出されずに重篤になってしまう可能性があります。こうした症状があったら薬を服用せずに、早急に受診してください。

急性下痢は主に感染や暴飲暴食などによって起こり、慢性下痢は炎症性腸疾患や薬の副作用など幅広い原因によって起こります。

急性下痢

ウイルスや細菌などの感染による胃腸炎、そして暴飲暴食やアルコールの過剰摂取によって起こっているケースがほとんどを占めます。冬季は特にウイルス性の大腸炎が増加する傾向があります。感染性の胃腸炎は周囲に感染を広げないためにも早期の受診が重要です。

慢性下痢

クローン病や潰瘍性大腸炎など難病指定された炎症性疾患、大腸がん、過敏性腸症候群、薬の副作用、ストレスなど、多くの原因により起こります。重大な病気が隠れていないかを早急に調べる必要があります。

ウイルス性胃腸炎

ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルスによるものが多く、他にもコロナウイルスなどさまざまなウイルスが下痢を起こします。吐き気や嘔吐、発熱、腹痛などをともなうことが多く、脱水を起こしやすいので注意が必要です。特に冬季に流行しやすく、感染力が強いため早めに受診してください。

過敏性腸症候群

病変など器質的な問題はありませんが、蠕動運動などの機能的な問題によって起こっているとされています。主に下痢を起こすタイプの他、便秘タイプ、便秘と下痢を繰り返すタイプなどもあります。下痢を起こすタイプの場合、緊張などをきっかけに強い腹痛が起こって、トイレに駆け込むと水のような激しい下痢になります。

潰瘍性大腸炎

大腸や小腸の粘膜に慢性的な炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じさせて、下痢や血便といった症状を起こします。症状のある活動期と治まる再燃期を繰り返すことが大きな特徴で、原因がわかっておらず難病指定されています。炎症を解消して症状のない状態をできるだけ長く続けられるようコントロールする治療を行っていきます。

クローン病

潰瘍性大腸炎と同じく難病指定されていて、下痢や血便を起こす活動期と再燃期を繰り返しますが、クローン病では口から肛門まで消化管全域に炎症や潰瘍を生じます。そのため、症状がある時には栄養療法などが必要になることもよくあります。こうした違いがあるため、潰瘍性大腸炎との鑑別が重要です。

大腸がん

ほとんどの大腸がんは、放置した大腸ポリープから発生します。ポリープや大腸がんのサイズが大きいと、便秘・下痢・便秘と下痢を繰り返すといった症状を起こすことがあります。また、血便をともなうこともあります。

急性下痢

水分を十分に補給し、脱水がある場合には点滴を行います。基本的に安静を保って自然治癒を待ちますが、整腸剤や抗菌剤を用いることもあります。

慢性下痢

問診で症状や既往症、飲んでいる薬などについてうかがって、触診をします。その上で必要な検査を行って、原因疾患に合わせた治療を行います。大腸カメラ検査は、粘膜の状態を直接確認できますし、疑わしい部分の組織を採取して病理検査を行って幅広い疾患の確定診断が可能です。また、病変の形状や位置、大きさなどもしっかり確認できるため、適切な治療につながります。炎症などの器質的な病変がない過敏性腸症候群と診断されたら、腸機能の改善や症状緩和のための薬物療法や、生活習慣改善についてのご相談などを行っていきます。